研究紹介

運動動作習得アプリの開発

教養教育センター 教授 
宮口 和義

文部科学省は社会の情報化の急速な発展等に伴い、ICT(Information and Communication Technology)を最大限活用した21世紀にふさわしい学びの実現を目指しています。これはコンピューターやインターネットなどの情報通信技術を活用し、教育の質の向上を高めようというものです。実際、最近の小学校には複数台のiPadやWindows PCが配備されており、児童や先生が共有で使っているところが増えています。
ただ、物心ついたときから身近にスマホやタブレットがあり、“デジタルネイティブ”と呼ばれる今の小学生にとってiPadが単なるゲーム機になっているように感じられることがあります。また、ICT教育をいち早く導入した韓国では、資料を検索すると簡単に結果が出るため、問題解決能力が落ちる等、子どもの学力に目立った成果は現れていないことが報告されています。iPad等をもっと上手に活用し“学びの武器”にしていく必要があります。
運動の技能習得や向上には、自分の動作やフォームを客観的に認識し、正しいフォームへ近づけていくことが重要です。最近では、私もゴルフの練習をする際、スマホでフォームを撮影しスイングチェックを行っています。自分の動きのイメージと実際のズレが必ずあるからです。昔はトラック一杯のボールを打たないと(とにかく数多く打たないと)上手くなれないと言われ、ひたすら練習していたのですが、今思うと下手を固めていたのかもしれません。ゴルフでも他のスポーツでも、このズレを知らずして上達はありません。そういう意味で、体育授業でこそiPadを大いに活用すべきだと考えています。
これまで運動動作の確認にはビデオを用いてきましたが、フォーム確認や手本となる画像との比較をリアルタイムで行うことが難しいという課題がありました。近年iPadが普及し、お互いに運動動作を撮り合うシーンも見られるようになりました。しかし、動作確認に時間が掛かり過ぎる、後々に振り返ることが難しいといった問題も指摘されています。
そこで「運動直後に、紙媒体で自分の動作の連続写真を渡せないか?」ということを考えました。最近では、撮影した動画を、お手本と2つ同時に再生し見比べられるアプリも登場しましたが、敢えてプリントアウトにこだわりました。現在、画像機器を扱うリコーと連携し、運動動作を連続写真でその場でプリントアウトするアプリの開発を進めています。そうすれば、①気づいた点の書き込みができる、②友達・手本との比較が可能、③ファイル可能、④後に動作の変遷を振り返ることができる、⑤操作は見学者が行う、といった利点があります。特に児童の場合、映像ではわかりにくい“動きの軌跡”がパラパラマンガのようにわかりやすいのではないかと思います。このシステムを利用すれば、自分で自分の動作を認識・分析できるため、学習効果が高まり、問題解決型学習にも役立つと考えられます。実際の体育授業で試作アプリを試してみました。児童の反応はとても良く、動作の比較分析を通して、動画以上に違いを明確に把握できたようでした。

動作の流れを残像表示するストローモーション機能も!