13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう

海岸林に生息するアカテガニの生息地保全と消化管由来バイオマス分解細菌群の活用

アカテガニ(Chiromantes haematocheir)は東アジア、中国・台湾・韓国・そして西日本沿岸域に広く生息する甲殻類です。沿岸地帯の森に生息し、落葉や小動物を食べて生息し、夏の夜には沿岸で放仔し、その幼生(ゾエア)は沿岸を回遊し、成長してメガロパとなり、やがて稚ガニとなって森に帰るという生活環を持っています(1)。

海岸林で落ち葉を食べるアカテガニ

筆者らは、森林に生息するアカテガニ等の甲殻類が、落ち葉や木片を食料とする草食性であって、森林と海を往復する習性から海辺林―水域の物質循環や沿岸の水産資源維持を担うほどのバイオマス処理を行っているということを発見しました。そこで共同研究者の三宅はこの草食性甲殻類の消化管に対してスクリーニングを行ったところ、強いリグニン分解能を有する好気性微生物を単離することができました(2)。この分解菌を活用することにより、難分解性のリグニンが多量に含まれている植物バイオマス資源を有効な資源として活用することが可能となります。同時に現在環境改変の影響を受け、その個体数を大きく減少させているアカテガニ資源を回復し、沿岸生態系を健全に保つための方策を提案してゆきたいと思います。

培養によるリグニン吸光度の減少を示すグラフ

研究業績

  1. Plankton and Benthos Research 15,306–316.2020.https://doi.org/10.3800/pbr.15.306
  2. Journal of Bioscience and Bioengineering 128,316–322.2019.https://doi.org/10.1016/j.jbiosc.2019.02.012

提供できるシーズまたは支援できる技術分野

  • アカテガニが生息できる沿岸環境の保全、森川海の連続性を保つ生物保全工法
  • バイオマス分解菌は環境汚染離分解性物質の分解、がれき処理、コンポスト効率化等、環境分野において活用可能

社会的成果または実用化された内容、商品、特許など

  • 特許第6426397(平成30年11月2日)三宅克英・柳井清治

産学・地域貢献に関する経験・実例および連携した企業業種

  • 金沢市犀川河口の伐採を受ける水辺林に生息する陸ガニ類の保全.タカラハーモニストファンド,研究の部,タカラ酒造,Jul,2018 – Jun,2019
  • 能登GIAHS生物多様性ワーキンググループ座長
  • 金沢市自然環境審議会委員

マッチングしたい分野・業種

アカテガニを活用した地域おこし、自治体、環境産業、NPO

ヤナイ セイジ
柳井 清治
コーディネータ、特任教授
研究分野
河川生態学、森林学、砂防学
略歴
北海道大学大学院農学研究科卒 農学博士
北海道立林業試験場科長
北海道工業大学工学部教授
教員からの
メッセージ
森と海を行き来するアカテガニは健全な里山里海のシンボルです。是非守ってゆきたいものです。