教員紹介

「見て楽しい食べて美味しい」サツマイモの開発 バイオ技術で暮らしに彩りを

オオタニ モトヤス
大谷 基泰
生物資源工学研究所 准教授
静岡県出身。千葉大学大学院自然科学研究科農学博士。平成2(1990)年に石川県農業短期大学附属農業資源研究所助手、平成30(2018)年から現職。専門は植物細胞工学。

どのような研究をされているのですか。

植物のバイオテクノロジーを主に研究しています。研究対象はサツマイモ。サツマイはエネルギー生産能力が高く、少量の化学肥料で高収量が期待できるため環境にも優しい植物です。サツマイモの特性をさらに高めたり、利用するなどして、「新しい食味を持ち、観賞価値が高いサツマイモ」の開発を目指しています。サツマイモは交配が難しく遺伝構造も複雑なため、バイテク技術を応用するには適した材料です。
バイテクに欠かせないのが組織培養技術の確立です。1996年に植物ホルモンの一種「合成オーキシン」のいくつかがサツマイモの組織培養に大変有効であることが分かりました。この発見をきっかけに、サツマイモの遺伝子組み換え技術が飛躍的に進歩しました(図1)。それ以降、大学内外の研究者と共に、さまざまな品種でデンプン組成の改変や除草剤抵抗性サツマイモなど、多くの遺伝子組み換えサツマイモを開発してきました。世界で初めて糯もち性のデンプンを含むサツマイモの開発にも成功しました。現在も、学内外の研究者と共同でサツマイモの遺伝子組み換えやゲノム編集に関する研究を精力的に続けています。
サツマイモの観賞価値を高める研究では、遺伝子組み換えと交雑育種を併用して新品種の作出を目指しています。最近になって遺伝子組み換えで花や葉のカラーバリエーションを増やすことができてきました。実は、日本の九州以北ではサツマイモの開花を目にすることはほぼありません。従来からの交雑育種法によって、本州や北海道でも開花するサツマイモを開発し(図2)、次に、遺伝子組み換えによって花や葉のカラーバリエーションを増やしていく予定です。さらに、カラーバリエーションを増やすために使っている色素のうち、付加価値の高い機能性色素については葉の食用化による特徴のある葉物野菜への道も開けてきます。

図1. 遺伝子組み換えサツマイモ植物が再生してきているところ(矢印)
図2. 新しく開発した石川県でも開花するサツマイモ

今後の抱負をお聞かせください。

これまでは、主に芋を利用してきたサツマイモですが、近い将来、地上部にある花や葉も利用できるサツマイモを提供できるよう研究を続けているところです。生産者だけでなく、一般の方々が手軽に楽しめるよう鉢植えやプランター植えに適した品種の開発も進めています。観賞用にサツマイモの花を育てて、秋になったら芋の部分を収穫して食べる。カラフルなサツマイモの花や葉、蔓で日よけのグリーンカーテンを作り、屋上やベランダの緑化をする。生活や街の景観に彩りを添えるような夢のある新しいサツマイモの開発に尽力していきます。