教員紹介

耕作放棄地でヒツジを肥育 自然を有効活用し、国産ラム肉を生産

アサノ ケイゴ
浅野 桂吾
生産科学科 助授
石川県羽咋市出身。博士(生物資源環境学)。石川県立大学大学院生物資源環境学研究科博士課程修了、農業・食品産業技術総合研究機構畜産研究部門を経て、2017年から現職。専攻は家畜栄養学、飼料学。

どのような研究をされているのですか。

耕作放棄地でのヒツジの放牧生産の研究です。白山麓にある耕作放棄地で、野草を主な餌としてヒツジを飼育しラム肉として生産、出荷することが目標です。野草から摂取した栄養や体重増加の条件、環境がヒツジに与えるストレスや病気のリスクなども調査しています。
以前、畜舎と耕作放棄地のそれぞれで飼育したラム肉を比較したら、畜舎の方が脂の質が良いという結果が出ました。これを受け、耕作放棄地でも肉質を高める方法を模索し、昨年の研究で出荷時に体重が55キロ以上であれば、畜舎で育てたラム肉の肉質に近づけられることが分かりました。55キロを超える体重にするための飼育条件を導き出すことを課題の一つに挙げています。
耕作放棄地では、ヒツジは自由に動き回って野草を食べます。食べた野草の種類や量、摂取した栄養は糞から成分を抽出し、分析。季節によって野草の植生が変化するので、飼育が始まる6月から出荷時期の10月下旬までの間、細かく調査しています。
現在注目しているのはタンパク質です。現状、餌である野草の補足飼料として飼料米などの穀類を与え、タンパク質を摂取しています。今年からその補足飼料にもやしの残さを取り入れました。金沢市のもやし製造業社「三吉商店」に協力いただき、共同研究として取り組んでいます。今は乾燥した残さを与えていますが、将来的には長期保存が可能な発酵飼料として利用できるよう実験しています。
また、最近の調査で9月に入るとヒツジの体重が増えにくくなることも分かりました。原因として挙げられるのは気温の急激な変化。激しい寒暖差がヒツジの免疫機能に影響を及ぼしているのではないかと考え、研究を進めています。

白山麓の耕作放棄地で飼育されているヒツジ
摂取した栄養の肉質への影響などを調査

今後の抱負をお聞かせください。

国産ラム肉の生産を拡大したいという思いがあります。現状、飲食店などで扱われているラム肉は輸入がほとんどで、国産は引き合いが大きい一方で供給はわずか。耕作放棄地でのラム肉生産が形になれば、畜産業の活性化が期待できます。また、家畜の行動を制限せずに飼育する「アニマルウェルフェア」という考え方が、海外を中心に推奨されています。自由に動き回る耕作放棄地で飼育すること自体が、ラム肉のブランド価値を高めることにもつながります。耕作放棄地での上質なラム肉の生産方法を追究していきたいです。