教員紹介

大腸炎のメカニズムを生化学的に解析 食品を用いた予防法の確立へ

ヒガシムラ ヤスキ
東村 泰希
食品科学科 助教
1983年京都府生まれ。2011年大阪府立大学大学院生命環境科学研究科博士後期課程を修了。博士(応用生命科学)。日本学術振興会特別研究員、京都府立医科大学生体食品機能学講座助教を経て2016年4月から現職。専門は生化学、栄養化学。

どのような研究をされているのですか。

生化学が専門分野で、中でも大腸炎を研究しています。日本は大腸がんの死亡率が最も高い国のひとつです。現代の食生活や生活習慣の変化によって患者数が増加しています。大腸がんの原因のひとつに大腸炎があり、食品を使って、大腸炎をブロックできる予防や抑制ができないかと考えています。
大腸炎が起きる要因には、腸の粘膜を分泌する機能が低下し、ウイルスや細菌をブロックするバリア機能が失われること、腸の中にある免疫細胞の機能が異常に活性化してしまうことが挙げられます。他にもいくつか要因がありますが、私はこの二つに着目し、培養細胞を使って炎症を予防したり、抑制する食品を見つける研究をしています。
もう一つのアプローチとして、どういう機序が働いてバリア機能がなくなるのか、免疫細胞が活性化するのかを見つけたいと考えています。特定の遺伝子が機能しないマウスが腸からの粘液分泌が増えて大腸炎にならないのを見つけ、その解析をしています。原因が解明できれば、ひとつの指標となり、大腸炎予防に効果的な食品を試すことができ、オリジナルティの高い研究になると期待しています。また、細胞が1000個しかないのに腸を持っている線虫を使って腸のバリア機能を評価する実験も始める予定です。腸は大変、興味深い臓器です。身体の中の免疫細胞の60%は腸内に集まっていて、腸だけにしかない特殊な免疫細胞もあります。神経も脳の次にたくさん集まっているんです。生物の中には脳や心臓がない物もいますが、腸を持っていない物はいません。ホルモンも分泌しますし、いろいろな機能を持っています。腸は食べ物が直接通るところなので、食事による改善が行いやすいというメリットもあります。

今後の抱負をお聞かせください。

以前から企業との共同研究でオリゴ糖を使って大腸炎や大腸がんを抑制する研究をしており商品化もされました。現在は、野々市市が特産化を進めているヤーコンに着目しています。ヤーコンにはフラクトオリゴ糖という整腸作用のあるオリゴ糖や血栓を抑えるポリフェノールが多く含まれています。これらが大腸炎に効果があるのかを、野々市市や金沢工業大学と連携しながら研究していきたいと考えています。

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