教員紹介

飛躍的に向上したゲノム解析を活用し需要と供給がマッチした育種を目指す

タカギ ヒロキ
高木 宏樹
生産科学科 助教
富山市出身。新潟大学修士課程修了。株式会社HOBを経て岩手生物工学研究センターへ入社。在職中に岩手大学大学院連合農学研究科博士課程修了。2016年4月から現職。専門は、植物遺伝育種学。

どのような研究をされているのですか。

「植物遺伝育種学」といって植物の遺伝や育種技術の開発を研究しています。生物には「ゲノム」という設計図のようなものがあり、それにより色や形などの特徴が決められます。ゲノムには膨大な情報量があり、これを解析するために10年ほど前までは、大変な時間とコストが必要でした。ところが「次世代シーケンサー」という機械が登場したことで、膨大な情報がこれまでとは比較にならない早いスピードと低コストで解析することができるようになりました。次世代シーケンサーが一般的に使われる以前は、イネの1品種を決めるのに膨大な費用がかかっていたのが、現在では数万円で決定できるようになったと言われています。私は次世代シーケンサーによるゲノム解析技術を用いて育種や栽培上重要な遺伝子を見つける研究を行っています。研究には二つの方向性があり、ひとつは遺伝子をどれだけ迅速に見つけるかという技術の開発、もうひとつは見つけた遺伝子を使って実際に育種を展開してみることです。例えば、いろいろなカブや白菜の遺伝子から、色や味などの特徴を決める遺伝子を見つけることに取り組んでいます。
次世代シーケンサーは本学にはないので、アウトソーシングしています。膨大な情報を扱うサーバも外部のサーバ(クラウドサーバ)を利用しています。以前は資金が潤沢にあり、高額な機械をたくさん持っているのが一流の証でしたが、メンテナンスや人件費にコストがかかりますし、機械やシステムは次々に新しく効率の良いものが出てきます。現在では、こうした機械に頼る部分はアウトソーシングした方がメリットがあります。ただ、育種は自分たちで行う必要があります。ですから大がかりな機械より、育種の場である畑や田んぼが近くにあることが重要です。本学はそれらが歩いていけるところにあるのが大きな魅力だと思います。

今後の抱負をお聞かせください。

これまでの育種は、長い時間と予算をかけて、農業試験場で育てて、それを広げていくという生産者の目線で進めるスタイルでした。育種のスピードが飛躍的に早くなった現在では、同時に消費者の視点でも検証し、市場に必要とされるものを作っていくことができると思います。21世紀の育種は需要と供給をマッチさせていくことも大切だと考えています。