2.飢餓をゼロに 7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに 13.気候変動に具体的な対策を

植物の鉄欠乏応答メカニズムの解明と鉄欠乏耐性・鉄富化植物の創製

鉄は全ての生物にとって必要な栄養素(必須元素)です。植物は鉄不足になると、土壌中から鉄を溶かして吸収・利用するためにさまざまな遺伝子の発現を誘導します。私たちは、イネの細胞内鉄センサーの候補分子であるユビキチンリガーゼHRZの機能を明らかにすることにより、植物の鉄欠乏応答メカニズムの全容解明を目指しています。

世界の耕地土壌の30%以上を占める石灰質土壌は、アルカリ性のため鉄の溶解度がきわめて低く、植物の多くが鉄欠乏になります。また、鉄は人間にとっても必須であり、世界で20~30億人もの人々が鉄欠乏性貧血症といわれています。私たちは、鉄の吸収、輸送を強化した植物を遺伝子組換えやゲノム編集などのバイオテクノロジーによって作出することにより、鉄を吸収しにくい不良土壌でもよく育ち、コメなどの可食部に鉄や亜鉛のミネラル栄養を多く含む作物の創製を行っています。また、愛知製鋼株式会社との連携により、新規鉄肥料PDMAの施用効果に関する研究も行っています。

研究業績

  • Development of a mugineic acid family phytosiderophore analog as an iron fertilizer. 
    Motofumi Suzuki, Atsumi Urabe, Sayaka Sasaki, Ryo Tsugawa, Satoshi Nishio, Haruka Mukaiyama, Yoshiko Murata, Hiroshi Masuda, May Sann Aung, Akane Mera, Masaki Takeuchi, Keijo Fukushima, Michika Kanaki, Kaori Kobayashi, Yuichi Chiba, Binod Babu Shrestha, Hiromi Nakanishi, Takehiro Watanabe, Atsushi Nakayama, Hiromichi Fujino, Takanori Kobayashi, Keiji Tanino, Naoko K Nishizawa, Kosuke Namba
    Nature communications 12: 1558 2021年 https://doi.org/10.1038/s41467-021-21837-6
  • Iron-binding haemerythrin RING ubiquitin ligases regulate plant iron responses and accumulation 
    Takanori Kobayashi, Seiji Nagasaka, Takeshi Senoura, Reiko Nakanishi Itai, Hiromi Nakanishi, Naoko K. Nishizawa
    Nature communications 4: 2792 2013年 https://doi.org/10.1038/ncomms3792
  • Iron Uptake, Translocation, and Regulation in Higher Plants 
    Takanori Kobayashi, Naoko K. Nishizawa
    Annual Review of Plant Biology, 63: 131-152 2012年 https://doi.org/10.1146/annurev-arplant-042811-105522

提供できるシーズまたは支援できる技術分野

  • 鉄欠乏耐性イネ,鉄・亜鉛富化イネの提供
  • 植物の鉄欠乏耐性の検定,植物の金属含有量分析
  • 植物バイオテクノロジー分野の技術

社会的成果または実用化された内容、商品、特許など

査定済み特許:

  • 特許第5553324号「新規鉄・亜鉛結合性制御因子と、その発現調節による植物の鉄欠乏耐性向上及び可食部への鉄・亜鉛蓄積の促進技術」
  • 特許第4998809号「植物の鉄欠乏耐性を向上させるポリペプチドおよびその利用」
  • 特許第4439844号「植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント」

産学・地域貢献に関する経験・実例および連携した企業業種

  • H29~ 愛知製鋼株式会社からの受託研究(新規鉄肥料PDMAの効果検定)
  • R4~ 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(鉄肥料PDMAの実用化研究)

マッチングしたい分野・業種

  •  鉄欠乏耐性植物や鉄・亜鉛蓄積植物の開発や利用を推進したい企業
  •  鉄肥料による生産性向上に興味のある企業 等
コバヤシ タカノリ
小林 高範
教授、所長
研究分野
植物栄養学、植物バイオテクノロジー
略歴
東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士(農学)
東京大学大学院 研究員、特任助教
科学技術振興機構 さきがけ研究者 等
教員からの
メッセージ
鉄は私たち人間にとっても植物にとっても必須な元素です。この分野の研究は、基礎と応用が密接につながっていると感じます。
https://www.ishikawa-pu.ac.jp/staff/staffname/kobayashi-takanori/