9.産業と技術革新の基盤を作ろう 15.陸の豊かさも守ろう

光などの物理的刺激を利用した昆虫の行動制御技術の開発

昆虫は我々の身近な隣人ですが、それゆえに害虫として問題となり、防除が必要になる場合があります。また、近年は世界的な昆虫の激減が明らかにされつつあり、生物多様性の保全の観点から保護が必要とされる場合もあります。昆虫は、光などの物理的刺激に強く反応する場合が多く、その行動的特徴や視覚世界を理解することで、対象の昆虫を上手く行動制御することが可能になります。例えば、夜行性の飛翔性昆虫が、光に集まる現象は実は、コントラストが急激に変化する境界部(エッジ)に誘引されるものだと明らかにすることで(映像1)、エッジを強調した高い誘虫性能をもつ光捕虫器を創ることができました(図1)。私たち石川県立大学の応用昆虫学研究室では、これまでにない昆虫の行動制御技術とそれを用いた製品を作り出すことを目指しています。

映像1:飛翔性昆虫が、光源周囲のコントラストの大きく変化する境界部に定位する傾向(エッジ効果)を発見しました。
図1:エッジ効果を利用した光捕虫器を企業との共同研究にて開発し、実用化しました。

研究業績

  • Combination of UV and green light synergistically enhances the attractiveness of light to green stink bugs Nezara spp. Nobuyuki Endo, Mantaro Hironaka, Yoshiyuki Honda, Tetsuhiro Iwamoto. Scientific reports 12(1) 12279-12279 2022. https://doi.org/10.1038/s41598-022-16295-z
  • 光を用いて昆虫生態系を管理する. 弘中満太郎. 計測と制御61(1) 36-40. 2022.  https://doi.org/10.11499/sicejl.61.36
  • 昆虫が光に集まる多様なメカニズム. 弘中満太郎, 針山孝彦. 日本応用動物昆虫学会誌 58(2) 93-109. 2014. https://doi.org/10.1303/jjaez.2014.93

提供できるシーズまたは支援できる技術分野

  • 光や熱、空間構造といった物理的な刺激を利用して、化学物質を使用せずに、昆虫を誘引、忌避、遮断する技術とそれを用いた製品の開発
  • 人工物が昆虫に与える影響の評価

社会的成果または実用化された内容、商品、特許など

査定済み特許

  • 特許 5773374 誘引装置,捕虫装置及び捕虫方法
  • 特許 6274671誘引用エッジ作出方法及びその方法を用いた捕虫
  • 特許 6384005 発光装置
  • 特許 6422261 虫用輝度・照度計
  • 特許 6699962 捕虫器
  • 特許 6861936 誘虫ランプ,捕虫方法及び捕虫器
  • 特許 7146212 低誘虫発光装置、表示装置。低誘虫発光方法及び表示方法 など

実用化実績

  • エッジ式光捕虫器の実用化(2013年~2018年)防虫企業
  • 模様を付加した黄色粘着板の実用化(2014年~2019年)粘着製品メーカー
  • 虫用照度計の実用化(2014年~2022年)電子応用機器メーカー
  • 高誘虫性混色LEDランプの実用化(2016年~2019年)照明メーカー
  • 光殺虫機能を有する害虫防除ライトの開発(2019年~)照明メーカー
  • 吸血アブ類の防除技術の開発(2019年~)施設運営企業
  • 構造的特徴による蜘蛛の忌避ライトの開発(2020年~)照明メーカー など

産学・地域貢献に関する経験・実例および連携した企業業種

  • 石川県における農業害虫防除技術のための共同研究(2017年~)石川農総研センター
  • 国立科学博物館における昆虫展への展示協力(2018年)国立科学博物館
  • 地元企業の工場への害虫対策アドバイス(2018年)化学メーカー
  • 地元企業の製品開発に対するアドバイス(2019年)照明メーカー
  • 地元企業の昆虫利用の新業態に対するアドバイス(2020年)酒造メーカー
  • 地元の理科文化祭行事での講演(2021年)石川県高等学校文化連盟理科部
  • 地元の高校での科学教室(2021年~)高等学校
  • 科学教室での講演(2021年)静岡科学館
  • 石川県の環境アセスメントに対するアドバイス(2022年)コンサルタント企業 など
  • 自然環境保護の条例についてのアドバイス(2022年)自治体 など

マッチングしたい分野・業種

防虫関連企業、照明メーカー、住宅メーカー、農業資材メーカーなどを中心として、害虫の防除や昆虫の保全についてご検討されている皆様との共同研究を希望します。

ヒロナカ マンタロウ
弘中 満太郎
准教授
研究分野
応用昆虫学、保全生物学、動物行動学
略歴
2003年鹿児島大学大学院連合農学研究科修了、博士(農学)
日本学術振興会特別研究員(PD)
浜松医科大学特任助教を経て、2017年より現職
教員からの
メッセージ
昆虫についてお困りの企業や自治体の方からのご連絡をお待ちしております。
https://www.ishikawa-pu.ac.jp/staff/staffname/hironaka-mantaro/