教員紹介

消費者の食料消費行動を分析
現代の食生活について理解を深める

スミモト マサヒロ
住本 雅洋
生産科学科 准教授
兵庫県出身。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程後期課程単位修得退学。神戸大学大学院農学研究科研究員などを経て平成29(2017)年から現職。専門は農業経済学。

どのような研究をされているのですか。

食料支出に占める外食と調理食品の支出割合
資料:総務省『家計調査』(用途分類、全国二人以上・勤労者世帯)より作成

ベースとしているのは、食生活の動向を示す食料消費の経済分析です。食料消費の傾向について経済学の考え方を用いて統計データを分析することにより数字で結果を示すことで、生産なども含めた食料にまつわる問題を理解する上での基礎的な情報を得られると考えています。

戦後、日本の食料消費の動きは大きく変化し、洋風化と外部化が進みました。洋風化は高度経済成長期を中心に畜産物と油脂類の消費が増え、コメの消費が減ったことを意味します。伝統的に日本人は、肉や油を使った食習慣に馴染みがありませんでしたが、現代では当たり前になっています。低成長期以降では、外部化が進みました。外食をする家庭が増え、購入した弁当や総菜も日常的に取り入れられるようになったのです。これはデータ上でも示されています。経済学の考え方とデータを基に分析すると、現状を説明することができます。

近年、外部化の先に、若者と高齢者の間で食生活の2極化が進んでいる現状が指摘されています。外食と購入した弁当や総菜などへの依存度を高めるような食の簡便化に抵抗がない若者と、健康志向から家庭内で作った食事を食べることを重視する高齢者の関係性が統計上にも表れています。2 人以上世帯、単身世帯など条件によっても食事の傾向は異なるので、さまざまな世帯の属性を考慮しつつ、詳細に分析を進めるとより現状を詳しく理解し、説明することができます。

また、2014〜2017 年にかけてエンゲル係数が急激に上昇しました。その理由として食料価格の上昇と消費支出の減少などが指摘されていましたが、経済学的な視点があまり考慮されていませんでした。当研究室では、経済学的な考え方を踏まえた統計データの分析により、消費支出の減少と食材や外食・中食(弁当や総菜など)の価格上昇によって、エンゲル係数が直接的に上昇する効果が、同時にもたらされる各食料購入量の減少による間接的な効果を上回っていたために生じていたと結論づけることができました。

今後の抱負をお聞かせください。

昨年から食品ロスに関連する分析を行っています。Webアンケートの回答も交えながら、食品ロスが発生する現状について理解を深めたいと思います。購入や消費の切り口での分析が一般的な食料消費の分野において、ロスの問題の統計的な分析はまださほど多くありません。問題意識を持って取り組んでいきます。