教員紹介

野菜の性質解明と廃棄物の有効利用で食品開発、循環型農業に貢献

ムラカミ ケンジ
村上 賢治
生産科学科 教授
大阪府出身。京都大学大学院農学研究科修了。岡山大学助手、講師、准教授を経て平成25(2013)年から現職。研究テーマは、野菜の品質向上のための形質改良および栽培方法の検討。

どのような研究をされているのですか。

主に野菜に含まれる特殊な成分に着目し、その含量を調節できる栽培方法や環境を探ってきました。

その一つがホウレンソウです。ホウレンソウにはシュウ酸という物質が特異的に多く含まれ、体内でカルシウムと結びつき、体質によっては結石の原因になるとも言われています。シュウ酸の含量を下げることにより、より健康的でおいしく食べられるホウレンソウを作れないかと考えました。そんな中、化学物質による突然変異でホウレンソウ中のシュウ酸を形成する遺伝子に変化が生じることが私の実験で分かりました。そして低シュウ酸含量の個体を発見し、研究の中で、シュウ酸が少ない個体は一般的な個体よりも生育に時間を要することが分かってきました。その点は植物工場や水耕栽培など、栽培方法・条件を限定することで補えないかと考えています。ほかにもホウレンソウのシュウ酸が5分の1に低下すると、リンゴ酸が5倍に増えるのですが、これも不思議な現象です。研究では成分構成の変化や、低シュウ酸の遺伝子を別の個体に入れ込むとどうなるか、そもそもなぜホウレンソウにはシュウ酸が多く、突然変異で含量が減るのかなど、興味は尽きません。

このほか、シシトウの辛味成分も研究しています。シシトウは栽培条件や個体により、強い辛味が出ることがあります。そもそも辛味が強い個体と弱い個体が生じる原因が解明されていないこともあり、詳しい分析を進めています。

低シュウ酸のホウレンソウ栽培試験の様子
水耕栽培など条件を整えて育成状況を調査

今後の抱負をお聞かせください。

ホウレンソウやシシトウをはじめとする野菜の性質分析と並行して、肥料成分を含む産業廃棄物の有効利用にも取り組んでいます。少し前に鶏糞を燃やした灰と、し尿処理の際に出た低濃度の硫酸を組み合わせて、リン酸成分から成る肥料の開発を手掛けました。リン酸は植物の生育には欠かせません。さらに産業廃棄物はユニークな未知の素材が多く、そこから肥料を造り出せるのも面白いです。過去には微生物が地下水中の二価鉄を酸化して生成する酸化鉄を鉄肥料として用いる実験も行いました。さまざまな企業や団体と連携して、野菜の生育に役立つ有機肥料や健康を意識した野菜の開発などに取り組み、環境に優しい循環型農業にも貢献していきます。