どのような研究をされているのですか。
産学連携の分野では、主に2つの研究を行っています。1つ目は加賀野菜を含む石川県産農産物の澱粉についてです。きっかけは加賀れんこんの「はす蒸し」でした。初めて食べた時、モチモチした食感が非常に美味しかったのですが、レンコンの代表産地である茨城県産で作った「はす蒸し」では同じような食感に仕上がりませんでした。レンコンに含まれる澱粉に秘密があるのだろうと研究を進めると、アミロペクチンの成分構造の違いが明らかになりました。澱粉はアミロースとアミロペクチンで構成しています。アミロペクチンは枝分かれした複雑な構造をしており、分岐する枝の長さが短いと糊化しやすい特徴があります。2産地のレンコンの澱粉に熱を加えながら特殊な顕微鏡で観察すると、茨城県産の品種よりも加賀れんこんの方が低い温度で糊化しやすいことが分かりました。また、加賀れんこんには粘りやすい澱粉がたくさん詰まっていました。ほかにも、五郎島金時や能登大納言小豆、石川県産米などの澱粉の構造も調べています。
2つ目は、グルテンフリー米粉パンの研究です。小麦アレルギーを持つ子どもが身近におり、どうにかして小麦を完全に除去したパンを作りたいと思いました。課題は小麦製のふわふわ食感を、米粉でも再現することでした。生地を膨らませるために、粘りが強い加賀れんこんや五郎島金時の粉末を試しに加えたりしましたが、最終的にはタンパク質分解酵素が効果的だと分かりました。現在、さまざまな種類のタンパク質分解酵素を試しながら、生地の膨らみ具合の分析と膨らむ理由を解明しているところです。
今後の抱負をお聞かせください。
石川県産農産物をはじめ、食品に関する困りごとや付加価値を見出すための科学的な裏付けが必要なことがあれば、相談に乗りたいと思います。石川県は良質な食材の宝庫。この土地に住むようになり、それを強く感じています。また、小麦アレルギーは時に命の危険に関わることもあり、世界的にグルテンフリーへの関心が高まっています。原材料となる米自体の改善や米粉パン用のイネの開発など、本学の教員や外部パートナーとも協力し、本学から新しい米粉パンを発信できたらいいなと思います。