教員紹介

温暖化の影響、災害のリスクも視野に手取川扇状地の水循環を解析

チョウノ シュンスケ
長野 峻介
環境科学科水利システム学分野 講師
佐賀県出身。京都大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員を経て、平成24年(2012)10月より石川県立大学に勤務・現職。研究テーマは、持続可能な地域環境のための水利システムの合理的管理と農地利用の最適化。

どのような研究をされているのですか。

石川県の白山山系から流出する手取川流域での水循環の研究です。手取川扇状地は豊富な水源に恵まれた歴史ある水田地帯です。その水田の脇を流れる農業用水や、水田から浸透する地下水の流れについて、さまざまな条件下でシミュレーションし統計的に解析しています。スーパーコンピューターが導き出した地球規模の気候シミュレーションをもとに、ローカルなエリアでどのような影響が出るのかを調べています。地球温暖化により水の管理の重要性が増しています。温暖化によって降水量は増えるかもしれませんが、気温の上昇により地上の蒸発散量も多くなります。すると地下水が少なくなる可能性があります。手取川流域では大量の地下水が工業利用されていることもあり、心配な点です。手取川は雪解け水が豊富ですが、石川県全体で見ると水が少ない渇水地域があり、また近年では大雨による災害を警戒しなければいけない場所もあり、そういった点を考慮しながら、各地域の中での水の流れを解析し、合理的な水管理の方法を検討するのが主なテーマです。また、山間部の人の手が入らなくなった耕作放棄地やその周辺では水の管理が滞り、土砂崩れやため池の決壊などの災害の危険性が高まることも懸念されます。地域を揺るがす大規模な渇水や、氾濫被害を未然に防ぐための排水管理の研究も始めているところです。データの分析にはAI(人工知能)を取り入れています。新しい技術によって今まで見えていなかった現象や傾向が浮かび上がることもあります。

手取川扇状地
農地に水を供給する七ヶ用水

今後の抱負をお聞かせください。

災害に注視し、地域規模でのシミュレーションや解析を通して、安全で持続的な人々の暮らしの役に立ちたいと考えています。古来より、水は人間の生活と切っても切り離せないものです。水利技術の発展により、水を奪い合う争いは少なくなりましたが、それでも河川の氾濫などの水害は今日でも起きる身近な災害です。今後、気候変動による影響が懸念されており、コンピューターやAI の技術は日々進歩していますので、それらを組み合わせながら水という自然を相手に、うまく対応し管理する方法を見つけていきたいと思います。